趣意書 of 諫早湾干拓事業及び地域住民を守る会


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地域を守るための諫早湾干拓事業潮受堤防排水門の開門阻止に向けた活動への募金のお願い(趣意書)


 平成22年12月、福岡高裁において、3年間の猶予の後、以降、5年間に亘って排水門の開門を命じる判決が下されましたが、その際には、開門されれば地元に重大な被害が懸念されること、また、国が、開門した場合の影響を科学的に明らかにするために環境アセスを実施中であったことから、地元としては、県、市と連携し、環境アセスの結果を待って、開門の是非については慎重に判断していただきたいこと、この判決については上告していただきたいことを繰り返し要請したところであります。それにもかかわらず、当時の菅総理は、有明海の再生を目指すという理由で、地元に何の相談もなく、一方的に開門判決を受け入れました。
 しかしながら、その後、平成24年に国が公表した環境アセスの結果によると、地元が懸念していたとおり、約7キロメートルの潮受堤防のうち、約250メートルの排水門を開門しても、潮流や水質等への影響はほぼ諫早湾内に止まり、有明海の環境改善につながる具体的効果は期待出来ない一方、開門されれば、地元の防災、営農、漁業面に深刻な影響・被害が生じることが科学的・客観的に明らかになったため、開門してもマイナス面がほとんどであることから、総合的に判断すれば開門すべきではないと言わざるを得ません。
国が示している被害防止対策については、開門方法によって差はあるものの、5年間の開門のために、約300億円から1,000億円を超える予算を費やすとされていますが、それでも被害を完全に防げない状況です。
開門については、このような問題点があるにもかかわらず、国が、開門を一方的に進めようとする姿勢を見直されないため、地元としては、自らの生命・財産・生活基盤は自ら守るしかないという、止むに止まれぬ思いの中、皆様方からの浄財のご協力もあり、開門差止訴訟を長崎地裁に提起し、一昨年11月12日に開門差止めの仮処分の決定がなされたところであります。
この仮処分決定は、
・ 排水門開門を命じた前訴福岡高裁判決では認められなかった開門による地元への甚大な被害発生を認めたこと
・ 国が示す事前対策は、その実現性や効果があるとは認められないと認定されたこと
・ 一方、開門による諫早湾及び有明海の漁場環境改善の可能性は低く、開門してもその影響を抽出することが困難であり、開門調査としての必要性も高くないと認定されたこと
・ これらを踏まえ、開門による甚大な被害と開門の公共性、公益性について比較検討し、前者が優先するとして、排水門の開放差止めが認められたものであること
など、前訴福岡高裁判決と事実上矛盾することを認めたうえで、前訴判決後の環境アセスや事実関係を踏まえ下されたものであり、地元の主張を基本的に認めた、極めて重い司法判断が示されたものであります。
 これにより、国が、開門に向けた対策工事を一方的に推し進めるという状況は一時的に止まっている状況ではあります。これも皆様から多大なご支援をいただいた賜物と感謝申し上げる次第であります。
しかしながら、未だ、国は、開門方針を見直すまでには至っておりません。開門問題の抜本的解決を図るためには、仮処分決定の重大性や国が自ら公表した環境アセス等の新たな知見を踏まえ、国において、開門しないとの方針に改めていただく必要がありますが、そのためには、現在、提起している排水門開放差止訴訟や地元が補助参加を行っている、小長井・大浦漁業再生請求事件控訴審に勝訴し、国に対して、政治判断を求める以外、なす術はないと考えております。
これらの訴訟は、多岐、長期に亘り、訴訟費用等についても相当多額を要することとなります。まずは、可能な限り地元で努力をする所存ではありますが、それだけでこの費用を賄うことは極めて困難な状況にあり、皆様方からのご支援に頼らざるを得ません。
このため、裁判をはじめ、開門阻止に向けた取組や活動を広く地域住民、農業者、漁業者が一体となって支援するため、平成23年に引き続き、今回、第2期の募金活動を実施するものであります。本趣旨を十分ご理解の上、ご賛同ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げます。

平成27年1月5日        
諫早湾干拓事業及び地域住民を守る会
会 長  芦塚 末光  
副会長  西山 岩喜  
副会長  大久保 信一 
副会長  新宮 隆喜